2019年5月24日 朝日新聞

患者を生きる 3803 食べる 色の区別つかない5情報編 自分の見え方知って


 色の違いがわかりにくい状態は遺伝による先天性の場合と、緑内障や脳炎などが原因の後天性の場合がある。先天性だと、日本人では男性の20人に1人、女性が500人に1人いるとされる。
 人ん目には、赤、緑、青を感じる3種類の細胞がある。物を見たとき、それらの細胞が反応するバランスで微妙な色を区別できるとされる。先天性の人は赤と緑を感じる細胞のどちらかを持っていなか、機能していないことが多く、赤と緑、茶と緑、オレンジと黄緑などの区別がつきにくい。
 滋賀医大病院(大津市)で「色覚外来」を担当する岩佐真紀医師(34)は「色の見え方は個人差があり、色覚異常の程度が軽いと気付かない人もいる」と話す。就職して初めて「色鉛筆の見分けがつかない」「ネクタイの色の検品ができない」などの理由で自身の色の見え方に疑問を感じて、相談に来ることがあるという。
 目で見た情報は脳で処理されるため、脳に病変ができたり脳内で出血したりすると、後天的に色が区別しにくくなることがある。後天性は原因の病気が回復すれば、色を見分ける感覚も戻ってくる。
 大阪市のPO法人「True Colors」は、学校などを訪ねて、赤が見えにくい人の状態を再現するレンズを使って見え方を体験してもらい、「色覚バリアフリー」を訴えている。高橋紀子理事長は広告会社で働いていたとき、色の見え方は人によって様々だと知った。
 高橋さんによると、多くの人は色の見え方で日常生活で困ることは少ない。ただ、赤と緑の区別がつかないと、果物の熟れ具合や、肉が焼けているかどうかの判断が難しく、赤身のマグロや野菜の鮮度も見分けにくいという。高橋さんは「バーベキューで『この肉、焼けている?』と友達に聞くことも大切です」と話す。
 色の区別がつかないという理由で、進学や就職で差別されるのは問題だ。ただ、新鮮な食材を見分ける必要がある調理師など、一部の職種では、色が見分けられないと不利につながる可能性もある。岩佐医師は「色覚外来では1人に1時間とって丁寧に説明する。自分の見え方を正しく知ることも重要だ」と話す。   (後藤一也)