2016年10月28日 朝日新聞

色弱の子 生活しやすく 困りごとや工夫の実例、本に



靴下に色の名前記入 ■ 番号でチーム分け

 子どもに先天的な色覚障害(色弱)があった時の生活上の困難や対応例を当事者からの相談を元にマンガ形式でまとめた「色弱の子どもがわかる本」(かもがわ出版)が発売された。原案を作成したNPO法人「カラーユニバーサルデザイン機構」は、子どもの色覚障害に悩む保護者や学校現場などでの活用を期待している。

 先天性の色覚障害は、色を見分ける一部の視細胞の光の波長への反応が一般的な場合と異なるのが原因とされ、色の区別がつきづらい。日本では男性の20人に1人、女性の500人に1人の割合でいるとされる。
 監修した同機構副理事長で東京慈恵会医科大教授の岡部正隆さんは自身も色覚障害があり、「子どもが見え方の異変に気付いても本人や周りで対処法が分からず、1人で耐えがちだ」という。
 本では「幼児」「保育園・幼稚園」と「小学生」「中学生」と年代別に、同機構が一般向けの相談窓口で受けた子どもの相談事例と対応を紹介している。たとえば「間違えて左右違う色の靴下をはいて保育園に行き、からかわれた」という事例では、1足ずつ違うデザインを選んだり、目立たない場所に色の名前を書いたりして色以外で見分けるなど工夫を紹介している。
 駐車場や駅などの電光表示で黒い背景に赤い表示が見えづらいなど安全に関わる事例のほか、図工や理科の実験で困りがちな状況など、色覚障害の特徴が理解できる。
 埼玉県の会社員の女性(43)が小学3年の長男の色覚障害に気付いたのは昨年。習い事の英語のクラスで「Redはどの色?」と聞かれ、Redが赤を意味すると知っていながら違う色を指さした、と講師から聞いたのがきっかけだ。「まさか」と驚いたという。
 長男が所属するサッカークラブの練習でビブスの色が分からずにチーム分けについていけず、コーチに注意されることもあった。事情を話すと、色ではなく番号の有無でチーム分けをしてくれるようになったという。「色弱について一般の人にもわかりやすい本があると説明の助けになる」
 東京の会社員の女性(39)の小学1年の長男も色覚障害があり、学校で相談することもある。「学校の先生でもほとんど知らない場合があり、理解が広まってほしい」と話す。
 岡部さんは「社会で解決すべき課題もあるが、工夫や周りの配慮で生活しやすくなることも多くあると知ってほしい」。本は税抜き1480円で、問い合わせはかもがわ出版(075・432・2868)へ。    (畑山敦子)