2016年5月3日 毎日新聞(大阪)

「ご近所のお医者さん」369 坂本眼科クリニック院長 坂本 篤さん=東大阪市
色覚検査のすすめ 職種により実務 影響も


 色覚検査は、2002年までは学校での定期健康診断として行われていましたが、プライバシーへの配慮などから03年以降は検診の必須項目から削除され、実質的に中断されていました。その後、多くの子どもたちが自らの色覚特性を知ることなく進学・就職と向き合うこととなり、日本眼科医会が10〜11年度に行った実態調査では、小学校低学年や、進学・就職において、色覚に関する多くの問題が生じていることが明らかとなりました。そのため、今年度の学校検診から、色覚検査が任意検査として改めて周知されることになりました。
 さて色覚とはなんでしょう。網膜にある視細胞には、視力や色覚をつかさどる「錐体」と、暗いところで働く「杆体」があり、錐体細胞は感じる色の波長の長短により3種類に分けられます。光そのものに色はありませんが、この3種類の錐体の反応によって色を認識するわけです。そしてこの錐体細胞の感受性の異常が色覚異常の原因となり、日本人では男性の5%、女性の0.2%に色覚異常があります。色覚異常といっても色が分からないわけではなく、状況によって他の色と区別がつきにくくなる、というもので、日常生活を過ごす上ではほとんど問題ありません。
 進学にあたっては航空大学校・海上保安大学校などを除くほとんどの学校で色覚制限はなく、就職についても、色覚異常が仕事に強く影響する一部の職種を除き、制限はありません。ただ、色覚制限のない職種でも、食品の鮮度を選定する職種や、美容や映像に関する職種などでは実務に困難を生じる可能性があり注意が必要です。
 中学生になる頃には、進学・就職に向き合うようになります。実際にどの学年で周知が行われるかは各学校の方針に委ねられていますが、希望調査票が家庭に配布されましたら、一度進路を含めて親子で話し合う機会を設けてみてはどうでしょうか。