2017年11月11日 毎日新聞夕刊

憂楽帳「色の多様性」


 「仕事を始めてから、人と違うことは強みだと思えるようになりました」
 大阪市を拠点に活動するアートディレクター、カツミさん(43)は穏やかな笑みを浮かべた。赤と緑、緑と茶など、一部の色の区別が難しい「色覚多様性」の持ち主で、色弱者や色覚少数派とも呼ばれる。日本人男性の20人に1人、女性の500人に1人の割合でいるとされる。
 雑誌、広告などのデザインのほか、イラストも自ら手がける。色の調整で家族の手を借りることもあるが、明暗の感性の鋭さや、色に頼らない構図など、見え方が違うからこその強みも発揮する。
 今夏、NPO法人「トゥルーカラーズ」とともに、色覚の多様性について啓発する短編アニメーションを製作した。「フシギの色の国のアリスちゃん」と題し、色の国の旅を通じて、さまざまな色の見え方を知るストーリーだ。
 「周りと比べられることの多かった学生時代には悩みましたが、今では色の見え方も個性の一つだと感じています」
 性格や感性が異なるように、色の見え方もさまざま。個性が強みになる社会は、きっと創造性に富んでいる。【関雄輔】