日本の色覚問題と補正レンズ

ネオ・ダルトンの補正レンズについて

 平成13年まで小学校4年生で行われていた色覚検査はその翌年からなくなりました。それまで大正10年から行われてきた検査が行われ なくなったのです。
 日本では18歳から自動車免許を取得できますが、現在その年令に達し講習を受ける人たちの中には一度も色覚検査を受けていないため 色覚異常に気づいていない人もいます。
 以前は学籍簿に色覚の欄があり、進学、就職の際の差別につながっているのではないかという指摘から記入欄がなくなり、数年後には「色覚を個性として認め、進路の自由を侵害しないため」という理由で検査も廃止されました。
 色覚検査が廃止されたことによって一見解放された社会にはなりましたが、反面、自分自身が色弱者であるという認識がないため結果として色弱者にとって実現が困難なことに挑戦してしまうというケースも起こっています。
 ご存知のように社会は色で溢れています。ネオン、看板、標識、食物、電気コード、絵の具、チョーク、ファッション、信号機、LED、鉄道路線図などどれも生活する上で重要な識別となりますが、色弱者にとっては色識別が困難なことが多く存在しています。 ただ単に色だけで意味や危険を知らせることが間違いを起こす原因となります。特に色の識別・選択の誤りが大事故の原因となり自分の命、他人の命を失うことになってはなりません。
 色弱は日本においては男性の約20人に 1人、女性では約500人に 1人、女性の保因者は約10人に 1人という高い確率で存在し、ほとんどが遺伝による原因であるといわれ現在の医療では色覚異常を治療することはできません。 ネオ・ダルトン色覚補正レンズは色の識別を補助、補正し正常者の色覚に近づけるレンズとして吉林大学医学部名誉教授で自身も色弱者である陳暁光氏が研究、開発したものです。
 これまで不可能とされてきた先天性色覚異常の補正を可能にして色弱者の方々にとっては新たな色世界を感じることのできるレンズで す。色覚異常者の多くは緑と赤の見分けが困難です。この補正レンズはこれらの識別を容易にするために感度の強い色の透過率を下げ、感度 の弱い色の透過率に揃えることにより眼に入る光の量を調整する光干渉という原理を用い、本来の色のバランスに近づけ、それぞれの色の波長近くの色も判別しやすくするものです。
 近視や遠視のレンズは焦点を調整するものですが、ネオ・ダルトン補正レンズは真空蒸着という技術で光を反射・干渉・吸収する薄い膜をコーティングすることにより、レンズを通して目に入って来る特定の色の光の量をコントロールするものです。
 東京慈恵会医科大学の故北原健二教授は「赤と緑が分かるように補助するレンズで、一番の特徴はその人が持っている色の世界を崩さずに識別できるようになる。仕事がやりやすくなる」「このレンズが正しく理解され、本当に使いたい人に行き渡るように」と言っています。