2023年11月8日 読売新聞

色覚多様性 ゆるく話そう 大阪のNPO 市内で「お茶会」 体験レンズで芸術鑑賞も


 人によって生まれつき色の見え方が違う「色覚多様性」について理解を深めてもらおうと、啓発活動に取り組む大阪市のNPO法人が、市内のカフェで気軽に話し合う「色いろお茶会」を始めた。月1回、色の見え方について話したり、体験レンズを使ってみたりしてもらい、色覚多様性を身近に感じられる機会を提供している (杉山弥生子)

 お茶会を開いているのは、NPO法人「True Colors(トゥルーカラーズ)」(大阪市中央区)。教育現場で講演をしたり、アート展会場で、赤や緑などの特定の色を識別しにくい「色覚少数派」の人と、それ以外の「多数派」の人とで作品の見え方がどう違うのかを体験できるレンズを貸し出したりしている。
 お茶会は9月にスタート。10月23日には、大阪市中央区の「コンセントカフェ本町店」で2回目の開催があり、色覚少数派の当事者や小学校の養護教諭、アート作品の制作に携わる人ら、経歴やバックグラウンドも多様な8人が参加した。
 NPOの高橋紀子理事長は、参加者とお菓子やお茶を楽しみながら、「参加条件には何の制限もありません。お茶を飲みながら、色覚多様性についてゆるく会話ができたら」とお茶会の趣旨を説明した。
 色覚少数派当事者の会社員香月昭人さん(47)(豊中市)は、知人の紹介で参加したという。他の参加者から、色の見え方が周囲と違うと知ったきっかけについて聞かれ、香月さんは「小学校の時に学校で受けた検査で、自分は人と違うと気付いた。大人になってからも、周りには明かさなかった」と答え、仕事の書類で、蛍光ペンで色分けされた部分を見分けられず、同僚に色を尋ねてその場をしのいだというエピソードも語った。
 会場のカフェの壁には、色鮮やかな絵やアート作品が飾られており、色覚多数派の参加者は、少数派の見え方を体験できるレンズを使って鑑賞。「色が変わると、人物の表情が違って見える」「別世界にいるみたい」「赤色と茶色の区別がつきにくい」などと感想を口にした。他方、少数派の香月さんは、多数派の見え方を感じられるレンズを試し、「赤い花がくっきり見える」と驚いていた。
 高橋理事長は「色覚少数派の人は、障害があると思われがちだけれど、そうではない。瞳の色が違う欧米人と日本人でも見え方は違っていて、色の見え方は人それぞれなんです」と参加者に伝えていた。
 「色いろお茶会」の参加費は1000円(フリードリンク、お菓子付き)。問い合わせは「トゥルーカラーズ」(06・4708
・5833)。

色覚多様性

 トゥルーカラーズによると、「赤と緑」「茶色と緑」など特定の色の識別が難しい「色覚少数派」は、男性で20人に1人、女性は500人程度に1人の割合でいるとされる。先天性の遺伝によるもので、少数派でも識別しにくい程度は人によって異なる。
 かつては小学校で色覚検査を実施していたが、差別につながるとして2003年度に廃止された。しかし、パイロットなど採用時に色覚について制限を設けている一部の職業の試験で検査を受けて初めて、自身が少数派だと気付くケースなどがあるという。文部科学省は14年、保護者の同意を得た上で、学校での検査を促す通知を出し、現在は検査をしている学校もある。